昨今、女性へのAED使用に関して、セクハラや訴訟リスクを懸念する声が一部で聞かれます。しかし、実際にそのようなリスクが存在するのか、私が独自に検証してみました。
そもそもAEDとは何をする道具?

AED(自動体外式除細動器)は、心臓が止まった人を助けるための機械です。心臓が止まる原因の一つに、心室細動という心臓の動きが乱れる病気があります。この状態になると心臓が体に血液を送れなくなります。
AEDは、この心室細動を治すために、心臓に電気ショックを与えて正常な動きに戻す機械です。ただし、脳卒中や低血糖、脱水などが原因で倒れた場合には直接効果はありませんが、これらが原因で心臓が止まることも多く、最終的にはAEDが必要になることも多いため、”倒れている人がいたらAED”という初動は正しいのです。
さらにAEDは一般市民でも使えるよう設計されており、2枚のテープと1つのボタンがあるだけで、日本語の音声案内に従うだけで操作が可能です。心電図を自動で解析して電気ショックが必要な場合のみ作動するため、誤使用のリスクは極めて低いです。
訴訟の実績が1例もないのに加熱する果てないAED論争は、
まるで宝くじで大金を得た後の人生の荒廃を妄想する人の杞憂のよう。
間違ったAEDの使用で訴えられることはある?

日本の法律では、救命目的で行われた行為に対して、責任を問うことは非常に限定的です。これは、他人の生命や財産を守るための行為を保護する「緊急事務管理」という法律の原則があるためです。
法的根拠まとめ
1. 民法第698条「緊急事務管理」
他人の生命や財産を保護するために行われた行為について、救命の目的で悪意や重大な過失がなければ、責任を問われません。
2. 厚生労働省の見解
「非医療従事者による自動体外式除細動器(AED)の使用のあり方検討会報告書」によれば、一般市民が救命活動を行うことは推奨されており、損害賠償責任が問われる可能性は極めて低いとされています。
→たとえば身につけている服やアクセサリーを壊しても救命のためなら責任は問われない
非医療従事者による自動体外式除細動器(AED)の使用のあり方検討会 – 厚生労働省
3. 弁護士や法学者の見解
AEDメーカーや救急医療の専門家も、AEDを使用したことによる法的問題のリスクはほとんどないとしています。特に日本では、救命目的でAEDを使用したことがセクハラや痴漢とみなされ訴訟に発展した事例は確認されていません。
男性が女性にAEDを使ったら「セクハラ」「罪」になる? SNSに流布する“ウワサ”に法学者が回答
【弁護士に聞いてみた】AEDを使ってセクハラになる可能性ってありますか?
4. 先進国における救急対応時の免責に関する法律「善きサマリア人法」の有無を調査

過去事例

事例①
過去には、「AEDを使用した男性がセクハラで訴えられた」との情報がSNSで拡散されたことがあります。しかし、これは事実無根であることが後に明らかになっています。例えば、2017年に投稿された内容では、「女性にAEDを使った男性が訴えられた」とされましたが、投稿者がその後、事実無根であると謝罪しています。
事例②
2025/01/20 ABEMA「女性にAEDを使わないで」男性が恐れる“社会的制裁”とは?分断の向かう先は?
https://abema.tv/video/episode/89-66_s99_p6202
こちらABEMAでの番組でも浜川という人物が過去に女性にAEDを使用して被害届を出され、警察に受理されたと話していますがその後、警察署は当該の被害届を受理しておらず、そのような事実も虚偽の疑いが強く、この浜川という人物のつぶやきには疑わしい点が多く、医師、弁護士からも99%虚偽の可能性が高いと指摘、本人はアカウントをロックしています。
《ABEMAに疑惑》「AED人命救助したら強制わいせつで被害届」現役医師が違和感を覚えた”毛布・名刺・倒れた女性”のナゾ 広報部の回答は
Abemaに取り上げられた「AED使って訴えられた人」の話、不自然な点が多すぎる。裏取りもしていない。医師も弁護士も「デマなのでは?」と…
事例③
はてなブックマークでの匿名告発
女性にAEDを使ったら訴えられた話
匿名のため真偽不明だが、不可思議な点が多く、目覚めた後に野次馬の意見をどうやって聞いたか問題や事例②に似た救急・医療関係に疎いAIライターが書いた記事に見える
▼ソース
JCASTニュース 嘘だった「AED使った男性をセクハラで…」 投稿主「問題提起のつもりだった」
繰り返される「女性へのAEDで痴漢・セクハラ・訴える」デマのまとめ
女性へのAEDの抵抗感に関する報道・論文・アンケートまとめ:「配慮」は悪いことか
可能な限り過去を辿ってみましたが、AED施行に伴う救命行為で訴訟や冤罪を疑われた事例は見当たりませんでした。しかしデマと結論付けられたものは多数見当たりました。
このようなデマを書くのは限られた人ですが、労力を使いこのデマを作り出す理由を以下の記事で解説しています。

また、SNSの言論の中で見られる、AEDを過度に避ける人についてもその理由を解説しています。

胸骨圧迫のほうがリスクが高い
心停止の患者に対する救命措置では、AEDとともに胸骨圧迫(心臓マッサージ)が不可欠です。胸骨圧迫は、心臓が血液を送り出す機能を補うために行われますが、この行為自体に触れる行為が含まれるため、ためらいを感じるとすればこちらのほうがリスクが高いのですが、なぜかネット上の言論は”AED”に集中しているのが印象的です。
胸骨圧迫におけるリスクとその対応
胸骨圧迫が法的問題を引き起こす可能性は非常に低いですが、ためらいによる救命の遅れが問題となる場合があります。女性の場合、同性に胸骨圧迫を依頼する、または服の上から胸骨圧迫を行う、周囲の野次馬からの目隠しを用意する(人の壁)周囲に行動を説明することでリスクを軽減できます。
またAEDのパットは服の第一ボタンを外すだけでも、イラストより少しズレていてもきちんと動作します!

結局、女性が目の前で倒れたとき我々男はどうすりゃいいの?

男性がリスクを減らしながら救命もする最強の方法
「リーダー役」を引き受ける!
周囲に女性がいる場合、胸骨圧迫やAEDパッドの装着を依頼することで、自分が直接触れる必要を減らすことができます。
1. 周囲の状況を確認し、安全確保を行う。
2. 倒れた人の反応を確認し、大声で協力要請、最低でも3人集める。
3. 一人にAEDを持ってくるよう依頼し、自分は119番通報をする。
4. 胸骨圧迫の開始を指示する。AEDが到着したら、指示に従って女性に装着を依頼する。
5. 救急車の到着時間の平均は9分、この間で上記のことを行い待つ!

それでも完全にさけられぬ冤罪のリスク

救命行為を誤解されるリスクを完全に排除することは難しいです。しかも眼の前に倒れているのが女性で、密室であなたしか居ない、他の人間は近くに駆けつけられる距離にはいない、そんな状況であればどう転んでも、透明性を保つことが難しく、その女性を活かすも殺すもあなた次第。ネット社会では市中で倒れ救命処置を行っているあなたを第三者が撮影していて、それをSNS等にアップする可能性(非常に不謹慎かつ非常識ですが)も0ではありません。切り取り方によって猥褻様ととられる可能性やAIによる動画・音声改ざんのリスクも当然0ではないでしょう。世に敵が多い人ほどそれらのリスクにさらされる事になる、今まで冤罪がなくともこれからはわからないでしょう。そのリスクは全男性が知っておくべきだと考えています。
私はどうするか

結論から言うと、私はいかなる場合でも救命を試みます。
たしかに家族がある立場で冤罪のリスクを避けることはミクロ視点では正しいです。
しかしマクロ視点で考えると、逃げる自分が嫌だ、男性が訴訟リスクを感じて救命を試みないことで女性が命を落とすような、そんな社会は嫌だからです。綺麗事に聞こえますかね。
「カーラーの救命曲線」をご存知でしょうか

「カーラーの救命曲線」https://www.think-sp.com/2013/02/21/tw-kyuumei-kyokusen
これは心臓や呼吸、多量の出血から何分後に人が死ぬかを示した図です。これによると、心停止後の5分間が救命のカギとなります。心停止から5分以上経過すると生存率が急激に低下します。日本の救急車到着までの平均時間は約9分であるため、目の前で倒れた人を救命できるのは、実はその場にいる人だけです。「救急車の到着で助かる人も多い」のは致死性の不整脈でも完全に心停止していたわけではなかったか、心臓以外の原因だったか、救急隊の到着が奇跡的に早かった場合なのでしょう。自分がしなければ目の前の人が死ぬかもしれない。この天秤を動かせるのは目の前にいる自分だけだと思うからです。
一歩進んだAEDの使い方講座
AED設置場所アプリ

「AEDマップ」:全国のAED設置場所を検索できるアプリでおすすめです(無料)。
https://aedm.jp/
オンライン応急手当講習会の紹介

非常に良くできたオンラインでできる応急手当法です。情報がまとまっていて見やすいです。
以下はより真剣に学びたい、施設として持っておきたい場合のトレーニンググッズなどです。


番外編: AED論争のデマを作る人の心理を分析
このようなデマを書くのは私の調べた限りほとんどが男性であり、労力を使いこのデマを作り出す心理状態・社会構造には必ず理由があると考えています。つまり「女性にAED使用することを必要以上に忌避したがる人やデマを作り出す人」には特徴がある、ということです
この分析結果を分析し以下の記事で公開しています。

まとめ
女性へのAED使用におけるセクハラや訴訟リスクは極めて低く、法的保護も整っています。救命行為をためらう要因には、SNSデマや誤解が影響していますが、正確な知識と透明性のある行動が重要です。心停止後の5分間が生死を分けるため、迷わず行動し、リーダー役を引き受けることでリスクも下げる事ができます。これは当ラボの一番の推奨です。
次に目の前で倒れるのは、あなたの大切な人かもしれません。いつかどこかの誰かを救えるように、当ラボも日々進化する健康知識を発信し続けます。一緒に学び、いざという時に自信を持って行動できるよう準備を整えていきましょう!

引用・参考資料
• 厚生労働省「非医療従事者による自動体外式除細動器(AED)の使用のあり方検討会」
• 日本救急医学会ガイドライン
• J-CASTニュース









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