結論、覚えるのは三つだけ

真夏の長期停電で体を冷やす答えは、日陰、風、体を濡らす水。この三つに尽きる。エアコンも扇風機も止まった状況で頼れるのは、結局この組み合わせしかない。
なぜこの三つなのか。人間の体から熱が逃げていく仕組みそのものだからだ。ここを押さえておけば、停電下でも自分の頭で応用が利く。以下、大事な順に説明する。
いちばん効くのは「濡らす×風」の気化熱
汗をかくと涼しくなるのは、水が蒸発するときに体の熱を奪うからだ。これが停電下で最も頼れる冷却法になる。皮膚や薄い衣類を濡らし、そこに風を当てる。速乾スポーツウェアを濡らして着るのは、この原理そのものだ。
ここが肝心なのだが、濡らすだけでは足りない。濡れた体に風が当たって初めて水が蒸発し、熱を奪う。無風のときや湿度が高いときは効果がガクンと落ちる。濡らすことと風は、必ずセットで考える。
生地は使い分けたい。速乾ウェアは冷却が強いが乾くのも速く、何度も濡らし直す必要がある。綿など水を含む生地は蒸発が穏やかなぶん長持ちする。水が貴重な災害時は、水を保持する生地が有利な場面もある。
どうせ冷たいものを当てるなら場所を選ぶ

濡れタオルや保冷剤、凍らせたペットボトルを当てる伝導での冷却は、どこに当てるかで効率が変わる。狙うのは皮膚の近くを太い血管が通る場所、首の左右、脇の下、脚の付け根。ここを冷やせば冷えた血液が全身を巡り、芯から体温が下がる。
加えて手のひら、足の裏、頬も効く。ここには動脈と静脈が直接つながる特殊な血管があり、熱を逃がす効率が高い。冷たい水に手をつけると想像以上に涼しいのはこのためだ。
→前腕冷却法といいスポーツの試合でも注目されていますhttps://weathernews.jp/s/topics/202307/180145/
保冷剤を肌に直接、長時間当てると低温やけどになる。タオルを一枚はさむこと。感覚を訴えにくい子どもや高齢者は特に注意したい。
日陰に入り、地面の照り返しを断つ
日陰に入るのは基本だが、見落としがちなのが地面からの照り返しだ。真夏のアスファルトは表面が六十度を超える。すのこや段ボールを敷いて体を地面から離すだけで、浴びる熱がかなり減る。
電気がなくても風は作れる

風は上のすべての効率を底上げする土台になる。停電で扇風機が止まっても、風を得る方法はある。
人力で扇ぐ
うちわ、下敷き、段ボール、雑誌、扇げるものなら何でもいい。濡れた体に扇げば気化熱が一気に働く。疲れて続かないのが弱点なので、家族で交代し、高齢者や子どもを優先して集中的に扇ぐ。板や布を二人で持って上下にあおぐと省エネで広く送れる。
自然の空気の流れを作る
停電下ではこれが本命だ。疲れず持続する。
暖かい空気は上へ逃げる。低い位置の窓と高い位置の窓や階段上を同時に開けると、下から涼しい空気が入り上へ抜ける。二階建てなら階段が煙突の役を果たす。煙突効果と呼ばれる。
★ベンチュリー効果で風を強める
流れが狭い場所を通ると速度が上がる。ホースの先を指でつまむと水の勢いが増す、あれと同じだ。これを窓に応用する。二か所開けるとき、片方を大きく、もう片方を細く開ける。細い側が狭い通り道になり、そこを通る風が速くなる。両方を全開にするより、意図的に片側を絞ったほうが体に感じる風は強い。
人が休む一角を狭い通り道の近くに置けば、その一点に風を集められる。家全体は無理でも、家族が体を休める場所だけは涼しくできる。対角線上の二か所を開けると通風が生まれやすい。
非常用電源で小さなファンを回す
ポータブル電源やモバイルバッテリーがあるなら最も確実だ。USB扇風機は数ワットしか食わず、一万ミリアンペアアワー程度で丸一日回ることもある。車のアクセサリー電源から車載扇風機も回せるが、エンジンを止めたままだとバッテリーが上がるので残量に注意。非常用電源は小さなファンに回し、人力の扇ぎは要冷却者への集中投下に使う。この役割分担が現実解だ。
猛暑日は「濡らしてから風」が絶対条件
気温が体温、およそ三十七度を超える猛暑では、乾いた熱風をただ当てると体を温めてしまう。この状況では風だけに頼らず、必ず体を濡らしてから風を当てる。気化熱を働かせれば、熱い風でも冷やす方向に持っていける。猛暑日ほど水と風のセットが命綱になる。
大前提、水分と塩分を切らさない

体の外から冷やす話をしてきたが、そもそも汗をかける状態でなければ冷却は成り立たない。脱水すると汗が出ず、体温が下がらなくなる。水分と塩分の補給は冷却と同じくらい大切だ。経口補水液があればいい。なければ水一リットルに塩三グラム、砂糖二十から四十グラムで近いものが作れる。常温でいいので飲み続けること。
この症状が出たら迷わず119番

冷却でしのげる段階を超え、命に関わる熱射病に進むことがある。見きわめの決め手は汗の有無ではなく、脳の症状だ。意識がもうろうとする、言動がおかしい、まっすぐ歩けない、けいれん。これらが出たら体温調節の仕組みが壊れかけているサインで、汗はあてにならない。労作性の熱中症では汗をかき続けたまま危険に陥ることもある。
ためらわず救急要請し、待つあいだも冷却を止めない。冷たい水をかけ続け、首、脇、脚の付け根を濡れタオルで冷やしながら扇ぐ。とにかく速く全身を冷やすことが救命に直結する。
電気が止まっても、体の仕組みは変わらない。日陰、風、水。この三つを家族の誰もが使えるよう、今のうちに頭に入れておきたい。
なお、ここで繰り返し出てきた「濡らす水」や「飲む水」を断水下でどう確保するか。川の水や雨水を安全な飲み水に変える携帯浄水器の検証は別記事にまとめてある。あわせて読んでほしい。

また災害時はデマの情報が多数発生します。デマ情報を流す人の心理はなぜなのでしょうか。
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